2012年5月17日木曜日

Making of GUNBODY from SOLDIER BLADE work03

■インターミッション

・じゃ、90年代くらいのメカって何が違うんだろう?という事を僕なりに書いてみましょう。

・スタジオぬえやアートミックの当時のインタビューをみると、必ず書いてあるのが『線が多い』(描きにくい)と現場に怒られる話。あと、丸三角四角の組み合わせ限定でデザインする実践テクニックでしょう。

一方、最近の3D主体の現場インタビューでは大抵とにかくディテールを増やす話か、トゥーンシェードが綺麗に出る造形テクニックの話が多いように思います。

・これは、デザイン単独の話というよりは、イメージ生産シーンの違いの話で、現場の状況によって出来る事が自ずから変わっていくというような事だと言えるんじゃないでしょうか。話を戻すと、
90年代メカの特色はその高密度なディテール表現の殆どが手描きが容易なラインの組み合わせで形成されている事なんじゃないか?

というのが僕の仮説です。

しかも、これをここ迄最適化するためにはデザイナー単独の能力だと難しくて、やはり現場とのキャッチボールを重ねて出来る、できないの解を得る経験値を沢山積んだ結果ではないかと思う訳です。当時はホントに山のような量のOVAがリリースされてた時代だったので、描けるアニメーターとの信頼関係も線が増えていった理由なんじゃないのかなと。

でも、その増えた線はあくまで当時のアニメ描画文法の延長線にあるディテールなので、今の目で見るとちょっとストレンジに見えるのではないでしょうか。


■モデリングにおける具体例

・ポリゴン勃興期(プレステ1くらいの頃)は表示能力の制限もあって3D表現=ローポリといってもいい位のモデル精度が大半で、コストの掛かるムービーなどでも今の目で見るとロー~ミドル程度の表現でどうにかリアルなものを創出しようとしていました。

その頃のポリゴンモデルというと、プリミティブをひたすら変形、めり込ませてシルエットを作るようなものでOKだったんですが、段々レンダラーやシェーダがリアルになってくると光が漏れる問題や影が上手く生成出来ない問題等に対応するために『きちんとした形状』である事が要求されてきます。

※個人的にはこの辺の面倒くさくなってきた辺りでCGやりたがる人が随分減ったなぁという印象を持っています(笑)
・ 更に、形状をスムーズにするサブディビジョンサーフェース系の技術が入ってくると、サブディビジョンに都合の良いモデリングが優先されるようになり、メッシュが荒れるブーリアンや平滑な面とエッジの効いたディテールをちまちま入れるような事が難しくなってきます。便利なんだけど、何かと引換えだったんですね。

・こんな風に、ツールでやりやすいモデリングメソッドを演繹していくと、結果的に今みたいなモデリングになっちゃう訳ですが、前述のアートミックっぽいメカって円柱と球体が交差したり、平面に球体がめりこんでたりの『アニメーターには描けるけどポリゴンでやるにはちと辛い』形状オンパレードなんで、そりゃ最近見ないわけだよなぁと思ったんでした。
平面、サブディバイドによる曲面、プリミティブ形状が合体したガンボディの
基礎モデル。現在のモデリング環境ならこういう形状をハードディテールで
仕上げられるんじゃないか?というのが今回の造形面でのテーマです。

■そして、昨今の事情

・と、まぁ僕個人としては最近ではサブディバイドに対応したモデリングメソッドを強化したり、曲面にディテールを入れる際の下処理(すげーめんどい)を精神的修行で克服(笑)したりしながらどうにかやっていたんですが、ゴモラのモデリング以降急速にZBrushと3D-Coatの機能がUPしてきたり、参考に見ている海外サイト3dTotalの作例がどんどん凄いことになっていくのを見ると『こりゃなんか面白い事ができるんじゃね?』と思ってきた訳です。

話は微妙に変わりますが、PS2の頃、日本人が作るゲームのグラフィックって海外に拮抗できる凄いものがあったと思うんです。その一因として僕が思うのはワークフローの中でクオリティUPできるパートにおいて、テクスチャ(特にディフューズ)の描きこみ・作り込みに専念すればクオリティがかなり上がったから、というのがあると思うんですよね。

で、これからこの連載でやってみようと思っているモデリングメソッドのワークフローが洗練されてきたら、そういう日本人向けな作り込みがしやすい環境をある程度実現できるんじゃないか?なんて思ったりもするんですよ。

…まぁ、うまくいくかどうか、ニヤニヤ見守って下さい(笑)出来るトコはどんどん見せていきますんで。

週末にベースモデルができたら、どこかの部品を肴に3D-Coatへデータを持って行って、『面倒くさい形状』をどう処理するかの一例をお見せしようかと思います。