■前哨戦その1
■ガンボディ製作準備にあたって
・今回製作するモデルの内、自機F-92は提供された資料があるのでモデリングの方向性やテクニカルな部分を詰めやすい状態です。図面もあったし、それとディテール稿数点をミキシングすればかなりカッコイイイメージになりそうに思いました。ところが随伴機であり、ゲームをプレイしてみるとある意味主役級に働いてくれるガンボディについては、決定版といえるイラストが資料の中にはありませんでした。どうやら何点かのラフを経てデザイン自体は固まっているようなのですが、それをまとめた資料は無いようなのです。
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| るら坊氏から提供して頂いた資料の束。この中からガンボディのイメージを抽出する。 |
そこで、資料の中でポイントになりそうな図と開田裕治画伯によるカッコイイイラストをミックスしてF-92と同程度のディテールを持った図面を用意しよう、という事になりました。
今週はメカデザイン考証とディテールの検討を経由して、簡単な三面図の作成あたりまでをお見せできたらと思います。
平日も極力更新していきますが、基本的に『早起きして出社前に作業する』のが当サイトに許された活動時間ですので、更新まで手がまわらない時もあるかと思いますが、更新頻度を上げるための実験も兼ねてますので生暖かく見守っていただけると幸いです。
■デザインが生まれた時代について徒然。
・諸事情でそれぞれのデザイン画を大きくお見せできないのが残念ですが、ラフ画それぞれがまた超魅力的!るら坊氏から送られてきたデータを開けた時、僕の部屋には90年代の風が吹きましたね!(笑)
誤解を恐れずに大雑把に説明すると、当時のメカデザインのシーンは『ガンダム・センチネル』的な方向と『アートミック』的な方向の二つを如何にセンスよくブレンドするか?みたいな流行が支配的だったと思うんですが、ソルジャーブレイドはその辺りの処理をかなりハイレベルで実現しているなぁと思うんです。
当時のメカ系のゲーム仕事をしていたデザイナーの席にはきっと三冊の本があったんじゃないかと思うんですが、その内の一冊がセンチネル。で、後の二冊はエンターテイメントバイブルのアートミック大図鑑1と2!これは頷いてくれる同時代人が多いんじゃないかと思います。
・この頃のメカはとにかく線のディテールがどんどん増大していた時期で、関節には謎のパイプやアクチュエータが詰め込まれ、ケーブルずるずる…みたいな感じのメカがカッコイイとされていた時代だったように思います。
この線の多さは、95年のエヴァンゲリオン以降急速に洗練の方向に向かう訳ですが、その後のデジタル化(メカ物の3D化)で線がまた増えてもああいうテイストにはならなかったのが中々興味深いトコロです。
■当時のラインを現代の技術で再現する意義について、私見。
・なぜ、最近の線の多いメカと80~90年代当時の線の多いメカの傾向が大きく違うのかという理由はたくさんあるとは思うんですが、3D関係の仕事に従事している者的な視点で見ると、一点わかりやすい理由が見つかります。それは
当時のメカのディテールは得てしてポリゴンモデリングしにくい!
という至極簡単な理由が挙げられるのです。
・設定画では線でシャッシャッシャッと描かれたディテールでも、モデリングとなると全く別問題です。例えば、ブチ穴と言われるディテールだって、きちんとした精度で入れるのは地味に一苦労が必要です。
また、ディテールをジオメトリでやるのか、テクスチャでやるのか、テクスチャでやるならUVをどう展開するのか…。
実は、自由自在にメカCGをモデリングできる素材が揃ってきたのは最近の事と言えるのかもしれません。僕自身も思ったようなコントロールで製作ができそう、と感じられるようになってきたのはここ数年。それまではある表現のために別の何かを犠牲にしたり、やれる範囲での表現を選ばざるを得ないというのが現実でした。
・宇宙戦艦ゴモラのメイキング記事を書いて、メカCGモデリングについて情報を探している人が多い事に驚き、もっとどうにかしないとなぁと思ったんですが、それをアップデートした記事を書こうとしていた矢先に今回のソルジャーブレイドの件が飛び込んできたのは中々面白い巡り合わせだと感じたわけです。
数年前ならきちんと出来なかった80中盤~90初頭のあのデザインのムードを、今ならきちんと再現できるんじゃないか?と思ったんです。そう、ZBrushや3D-Coatを使えば。
続く。
